WORKSHOP
レベルアップを目指す方へ、JUAと現役講師陣がサポート
田村義進 翻訳ワークショップ
概要
文芸翻訳家の田村義進氏を講師にむかえ、未刊行の長編小説(まれにノンフィクション)をテキストとして使用し、受講生全員の訳文を持ち回りでていねいに検討する過程を通じて、文芸翻訳の技法を開示し、その質を出版可能なレベルまで高めていきます。東京、大阪、オンラインの3つのクラスがあります。
ジャンル
教材は主としてミステリ―。まれにですが、児童書やノンフィクションになることもあります。一回の授業で取りあげる範囲は、原文で2ページほど。教材は3カ月か4カ月で、新しいものに変わります。
スケジュール・受講料 (ご希望クラスの【募集中】の項目からお進みください)
講師
田村義進(たむら よしのぶ)
英米文学翻訳家 1950年 大阪市生まれ
金沢大学法文学部中退
訳書
- 『メソポタミヤの殺人』アガサ・クリスティー(早川書房)
- 『アメリカン・タブロイド』ジェイムズ・エルロイ(文藝春秋)
- 『書くことについて』スティーヴン・キング(小学館)
- 『復讐はお好き?』カール・ハイアセン(文藝春秋)
- 『カルカッタの殺人』アビール・ムカジー(早川書房)
- 『郊外の探偵たち』ファビアン・ニシーザ(早川書房)
など多数。
田村先生からのメッセージ
文藝翻訳という仕事に必要なのは、まず著者のほうを向いて原文を深読みし、次に読者のほうを向いて日本語を磨くことです。どちらも簡単なことではありませんが、その作業は苦しいながらも、なかなかに楽しいものです。その楽しさをクラスのみなさんと分かちあえればと思っています。
授業の風景
受講生の声
翻訳ってすごいな、自分にもできるのかな。20代のころ、田村先生の訳書『二日酔いのバラード』(ウォーレン・マーフィー著)を笑い転げながら読んで、そう思ったのが翻訳者を目指したきっかけです。
その田村先生に師事して早20年。初回のクラスには緊張しながら出席しましたが、和やかで自由な雰囲気に安心したのをいまも覚えています。授業では、課題文のポイントとなる箇所について熱く意見を交わします。ときには自分だけ誤訳をして冷や汗をかくことも。でもそうやって恥をかくたびに、少しずつ力がついてきたように思います。自分の訳が独りよがりではないか、客観的に見てどうなのかを確認できるのは、クラスを受講する大きなメリットですね。
ミステリーの短篇や実用書を数冊訳したあと、2012年に初めて長篇の訳書が出ました。日本ユニ・エージェンシーにご紹介いただいてリーディングをした『冥闇』(ギリアン・フリン著)というミステリー作品です。訳者に決まったときの夢のような気持ちはいまも忘れられません。
その後もラッキーなことにコンスタントに仕事を続けられています。プロとして翻訳を始めて変わったのは、締切に追われるようになったことですね。十分に時間をかけて完璧に納得のいく訳を仕上げられるということは、まずないように思います。訳のスピードを上げたいのですが、なかなか思うようにいきません。なので、これから翻訳の勉強を始めるみなさんには、短期間にまとまった分量の原文を読んで訳し、上質な訳をスピーディーに仕上げる訓練をしておくことをおすすめします。
「つねに作品全体を見渡して、作者の意図と流れに沿った訳をつけなさい」——訳語に迷ったとき、拠り所にしているのは田村先生のこの教えです。雑味のない、ぐいぐい物語に引きこまれるような訳ができるように今後も励みたいと思います。翻訳ってすごいな、と誰かに思ってもらえるような訳者を目指して。
はじめての訳書が出たのが2013年、ホームレスと野良猫の友情を描いた『ボブという名のストリート・キャット』という本でした。それからも卒業せずにずっと講座に通っているのは、田村先生から教わることがまだまだたくさんあるからです。先生の教えは翻訳の技術だけではなく、翻訳にまつわるあれやこれやまで多岐にわたり(あれやこれやの具体的な内容を知りたい方はクラスへどうぞ!)、教わった訳語をちゃっかり自分の訳書に使うこともたびたびあります。
講座を受けはじめたころは英文をぎこちない日本語(誤訳多め)にするだけで精いっぱいでした。そもそも翻訳の勉強をはじめたのは手に職をつけたいという軽いノリからだったので、講座についていくのもたいへんで、〝たたき台〟となる訳文を提出する当番の日には、もうこのまま南の島に逃げようかと思うこともありました。数かぎりない失敗を重ねるなか、先生の指導のおかげで〝どうしてこういう訳に至ったのか〟という思考のプロセスの大切さが少しずつわかってきて、物語を深く読み解いていくことを心がけるようになりました。
翻訳の仕事をはじめてからは、田村先生のクラスは貴重な情報交換の場ともなっています。家に引きこもり、うんうんうなりながら仕事をしている身にとって、翻訳仲間に定期的に会えるというのはほんとうに心強く、しかも、わからないことはなんでも師匠に直接訊けちゃうんですよ! もちろん田村先生はどんな質問にもていねいに答えてくださいます。この贅沢とも言える空間と時間を大切にしつつ、読者のみなさまに楽しんでいただける作品をこれからも翻訳していけたら、それはもう、このうえない幸せですね。