COLUMN
JUAスタッフによるコラム
「観る目の話」その2
JUAスタッフが観たり聴いたりしたものの感動興奮感想をお福分け。
『ムーラン・ルージュ!ザ・ミュージカル』を観た。最初にこの作品を観たのは2020年の2月で、コロナ禍直前のニューヨークであった。当時は作品についてよく知らず、作品名からして「パリの話だろう」くらいにしか思っていなかったが、「ムーラン・ルージュ」という場所には少なからず憧れを抱いていたので、胸躍る気持ちで観た。帝国劇場では、2023年の日本初演に続き2回目の観劇で、全編にわたり華やかな舞台において、とりわけカンカンの素晴らしさに大興奮した。
この作品は「ジュークボックス・ミュージカル」と呼ばれるもので、書き下ろしの楽曲はなく、既存の楽曲で構成されている。世界初演は2018年の米ボストンで、その後、ニューヨークのブロードウェイ、米国ツアー、ロンドン、メルボルン、日本と続いている。トニー賞ミュージカル作品賞など数々の賞を受賞している本作は、客席に足を踏み入れると、全面真っ赤な装飾に度肝を抜かれる。下手に「赤い風車」、上手に「象の部屋」と呼ばれるヒロインの控室が配されているほか、セクシーな衣装の演者が複数、本編が始まる前から、物憂げに舞台上を行き来する姿は、何とも異様だ。
物語は非常にシンプルで、ムーラン・ルージュのスター女優と若き作曲家のラブ・ストーリーだ。出会い、恋敵への嫉妬、愛の葛藤、悲しい別れなど、単純な展開だが、懐かしい英米ポップスから、ビヨンセやレディ・ガガの曲に至るまで、耳にしたことのある数々のナンバーが楽しい。そうだ、確かに楽しいのだが、つい余計なことを考えてしまう。これだけの数の楽曲を採用するには、さぞかし版権取得手続きが大変だったのではないか。そして費用も。無粋な言い方だが、それが少なからずチケット代にも反映されているのでは? ここ数年、海外作品のチケット高騰はすさまじい。
ところで、本家本元のパリ・モンマルトルのムーラン・ルージュには行ったことがないのだが、パリ五輪の開会式での同劇場ダンサーの出演シーンを観て、正直に言って、幻滅してしまった。私は日ごろから、パリを舞台に描かれる作品を頻繁に上演することで知られる某歌劇団の舞台をたくさん観ていて、それこそ、ムーラン・ルージュが登場する演目もたくさんあり、その都度、寸分狂わぬリズムと同期性で繰り広げられるカンカンを何度も観てきた。「どちらがホンモノなんだ?」と言いたくなってしまう…。(ロメロ)
お知らせ
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- 2024年12月12日 東京版権説明会2024(TRM TOKYO RIGHTS MEETING 2024)に参加しました
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