COLUMN
JUAスタッフによるコラム

大好きな “アレ” への渇望
弊社ミニBarのカウンターからJUAスタッフの雑談呟きなどです。
腹が減った。
流行り病による発熱で、ここ数日まともに料理ができない。冷蔵庫には食材があるのに、メニューを考え、立ち上がり、材料を切って茹でる、炒める、揚げる――。ただでさえ酷暑のキッチンに立つのはつらいのに、高熱と倦怠感がそれを許さない。いや、気力までもが奪われ、何を食べたいのかすら分からなくなっていた。しかも思い出した。シンクが漏水していて、水を勢いよく流すこともできないのだ。とはいえ、空腹は容赦なく押し寄せてくる。
私は根っからの食いしん坊だ。四六時中「美味しいものが食べたい」と考えている。といっても高級料理を欲しているわけではない。高価な店や希少な食材でなくても、自分が心から「うまい」と思えるものだけが正解だ。だからこそ「あそこの担々麺」「ここの麻婆豆腐は最後の晩餐」「おかんのビーフシチューも捨てがたい」などと、常日頃から食の妄想をしては悦に入っている。ところが、この数日間は違った。頭がうまく回らず、「これだ」と思える料理がまったく浮かんでこなかったのだ。
空腹をしのぐため、デリバリーにも頼ってみた。ハンバーガー、タイ料理、とんかつ……。しかし、どれひとつとして今の自分を満足させてくれなかった。何かが違う。けれど、その「何か」が分からない。
そういえば――。もうすぐ“大好きなアレ”をお迎えする日が近づいている。目指すは名古屋。アレは誰もが知るご当地名物のひとつだ。東京や大阪のそれとは違い、外はカリッと香ばしく、中はふんわり柔らかい。あらかじめ刻んであって食べやすく、まずはそのまま、次に薬味を添え、最後は出汁をかけて――三段階で楽しませる店も多い。タレがほどよく染みた、あの艶やかな姿を早く拝みたい。
熱が下がり、意識がはっきりしてきた。ふと天井の模様が別のものに見える。
「……うなぎ?」 (オクターヴ)
お知らせ
- 2025年09月29日 大阪・関西万博の北欧パビリオンで行われた文学イベント「北欧デー」に参加しました
- 2025年09月22日 弊社が英語版翻訳出版権を仲介した『黒猫亭殺人事件(横溝正史 著)』英語版(UK, Pushkin Press)が The Timesで1位、The Sunday Timesでも7位にランクインしました
- 2025年09月16日 原作小説の日本語版翻訳出版権を弊社が仲介した「リヴァイアサン」のアニメが配信されています
- 2025年09月08日 弊社日本語版翻訳件仲介「まぼろしの巨大クラゲをさがして」(BL出版)が第72回産経児童出版文化賞の翻訳作品賞に選ばれました
- 2025年09月01日 2025年第58回夏休みの本(緑陰図書)に弊社仲介タイトルが選ばれました