COLUMN

JUAスタッフによるコラム

2026年6月30日
弊社ミニBarのカウンターから vol.20

なすが好き

弊社ミニBarのカウンターからJUAスタッフの雑談呟きなどです。

なすが好きだ。あの艶やかな紫色を見るだけで、台所に立つ足取りが軽くなる。ひと口に「なす」といっても、丸いもの、細長いもの、大ぶりでやわらかなものまで、実に多様だ。それぞれの個性にあわせて料理を考えるのが、日々の楽しみである。

たとえば、チーズをたっぷりのせた「なすミートグラタン」。油を吸ったなすのとろりとした食感と、濃厚なチーズ、ミートソースのコクが重なり合うと、オーブンから取り出した瞬間の香りだけで幸せになれる。また、「なすとピーマンの中華風みそ炒め」は、甘辛い味付けが白いご飯を呼び、つい食べ過ぎてしまう。定番の「麻婆なす」も外せない。ピリッとした辛さの奥に、なすのやわらかさが舌に広がり、食卓がぐっと賑やかになる。

泉州の水なすに出会ったときは、そのみずみずしさに驚愕した。味噌ダレでシンプルに味わうのもいいけれど、地元農家の方に教わったミョウガやシソ、ジャコを混ぜた和え物は格別だ。さっぱりとしていながら、旨みが幾重にも重なり、「これ以上、お酒に合うつまみはあるのか?」と思うくらいだ。

さらに、素揚げしたなすを香味ダレに浸し、ひと晩、冷蔵庫で休ませると、味がしっとり染み込んで、ひんやりとしたごちそうに変わる。口に入れた瞬間、じゅわっと広がるあの感覚。まさに、「よだれなす」と呼びたくなる一品だ。

最近、テレビで知ったのは、ひと晩、和風だしにしっかり漬けたなすを細かく刻み、ソースにするという料理。エビや枝豆の炒め物にかけると、とろとろのなすが全体をやさしく包みこむ。これにカニや卵を加えたら、さらに贅沢になるだろうと想像がふくらむ。

そして、疲れて帰った日の強い味方は、蒸しなすだ。ヘタを取って皮をむき、ラップに包んで電子レンジへ。鰹節とポン酢をかけるだけで、簡単なのに驚くほど奥深い味になる。温かくても、冷やしてもおいしい。体も心もふっとほどける瞬間だ。

こうして考えると、なすは気取らず、それでいて懐が深い。どんな料理にも寄り添い、静かに主役にもなれる不思議な存在だ。そして思う。なすは、おいしいだけでなく、どこか物語をまとった食材だと。素朴で親しみやすく、ときに主役にも脇役にもなりながら、食卓の中で静かに存在感を放っている。

そう考えると、落語の「茄子娘」も、どこか他人事とは思えない。和尚の娘の正体がなすだと知っても、不思議と違和感がないのは、私が日々なすに親しみ、その魅力を知っているからかもしれない。

もしあの娘が台所に現れたら――さて、驚くべきか、それとも「今日はどんな料理になりたいの?」と声をかけるべきか。少しだけ考えて、やっぱり私は笑ってしまうだろう。なにしろ、こんなにも愛してやまないのだから。――なすが好きだ。(オクターヴ)

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