COLUMN
JUAスタッフによるコラム
なすが好き
弊社ミニBarのカウンターからJUAスタッフの雑談呟きなどです。
なすが好きだ。あの艶やかな紫色を見るだけで、台所に立つ足取りが軽くなる。ひと口に「なす」といっても、丸いもの、細長いもの、大ぶりでやわらかなものまで、実に多様だ。それぞれの個性にあわせて料理を考えるのが、日々の楽しみである。
たとえば、チーズをたっぷりのせた「なすミートグラタン」。油を吸ったなすのとろりとした食感と、濃厚なチーズ、ミートソースのコクが重なり合うと、オーブンから取り出した瞬間の香りだけで幸せになれる。また、「なすとピーマンの中華風みそ炒め」は、甘辛い味付けが白いご飯を呼び、つい食べ過ぎてしまう。定番の「麻婆なす」も外せない。ピリッとした辛さの奥に、なすのやわらかさが舌に広がり、食卓がぐっと賑やかになる。
泉州の水なすに出会ったときは、そのみずみずしさに驚愕した。味噌ダレでシンプルに味わうのもいいけれど、地元農家の方に教わったミョウガやシソ、ジャコを混ぜた和え物は格別だ。さっぱりとしていながら、旨みが幾重にも重なり、「これ以上、お酒に合うつまみはあるのか?」と思うくらいだ。
さらに、素揚げしたなすを香味ダレに浸し、ひと晩、冷蔵庫で休ませると、味がしっとり染み込んで、ひんやりとしたごちそうに変わる。口に入れた瞬間、じゅわっと広がるあの感覚。まさに、「よだれなす」と呼びたくなる一品だ。
最近、テレビで知ったのは、ひと晩、和風だしにしっかり漬けたなすを細かく刻み、ソースにするという料理。エビや枝豆の炒め物にかけると、とろとろのなすが全体をやさしく包みこむ。これにカニや卵を加えたら、さらに贅沢になるだろうと想像がふくらむ。
そして、疲れて帰った日の強い味方は、蒸しなすだ。ヘタを取って皮をむき、ラップに包んで電子レンジへ。鰹節とポン酢をかけるだけで、簡単なのに驚くほど奥深い味になる。温かくても、冷やしてもおいしい。体も心もふっとほどける瞬間だ。
こうして考えると、なすは気取らず、それでいて懐が深い。どんな料理にも寄り添い、静かに主役にもなれる不思議な存在だ。そして思う。なすは、おいしいだけでなく、どこか物語をまとった食材だと。素朴で親しみやすく、ときに主役にも脇役にもなりながら、食卓の中で静かに存在感を放っている。
そう考えると、落語の「茄子娘」も、どこか他人事とは思えない。和尚の娘の正体がなすだと知っても、不思議と違和感がないのは、私が日々なすに親しみ、その魅力を知っているからかもしれない。
もしあの娘が台所に現れたら――さて、驚くべきか、それとも「今日はどんな料理になりたいの?」と声をかけるべきか。少しだけ考えて、やっぱり私は笑ってしまうだろう。なにしろ、こんなにも愛してやまないのだから。――なすが好きだ。(オクターヴ)
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- 2026年06月29日 日本語版翻訳権弊社仲介「ヘンゼルとグレーテル」について訳者・穂村弘さんのインタビューが公開されています
- 2026年06月22日 日本語版権弊社仲介タイトルが第十二回日本翻訳大賞の最終選考対象・二次選考対象作品に選ばれました
- 2026年06月15日 日本語版使用許諾手続き弊社仲介協力『中国現代文学ギャラリー』公式サイト(集英社様創業100周年記念企画)が公開されました
- 2026年06月08日 原作日本語翻訳権弊社仲介の映画『サンキュー、チャック』が全国公開されました
- 2026年06月01日 日本語版翻訳権弊社仲介『マジック・ツリーハウス』(KADOKAWA)についてのインタビューが公開されています